私は18年度、これまでの沖縄イメージの研究を継続し、扱う時期を戦前期から現在にまで広げるとともに、場所も沖縄本島から八重山諸島を中心に置く方向へ、視点を拡大・移行させる形で本課題を進めた。具体的には9月中旬、イタリア・ヴェネツィアのカ・フォスカリ大学で開催された第5回沖縄研究国際シンポジウム「想像の沖縄:その時空間からの挑戦」(http://venus.unive.it/okinawa/ja/program.html)の第10パネル「エキゾチックな沖縄の宣伝」の中で、「沖縄イメージ、その発生と展開〜"想像の沖縄"と、方法としてのツーリスト〜」を報告し、その準備を契機として、3年間で行う本課題の初期作業を着実に進めることができた。その後もこの報告で得た着想を発展させ、現在執筆中の戦前期沖縄・人重山のイメージ形成に関する論文に結実しつつある。さらに続いて、18年度に進めた作業をもとに、戦後〜復帰後〜現在の時期について、数本の論文をまとめることができそうである。 また9月初旬には、沖縄で本課題と密接に関連するシンポジウム「沖縄イメージと風景・身体・記憶〜海洋博から現在まで〜」(http://homepage2.nifty.com/tada8/sympoO6.htm)を自ら企画・主催した。パネリストや参加者の方々から、現地の生の声を多く聞くことができ、今後の課題遂行に有効な知見を得ることができた。10月には本課題と関連して、沖縄イメージの形成を地域振興や米軍基地の問題との関わりで明らかにする論文を執筆したことで、それまで気づかなかった新たな知見を得ることができた。繰り返し沖縄本島と八重山地域へ出張し、文献調査と聞き取り調査を行い、豊富かっ貴重な資料・情報を収集した。また並行して、むしろ東京でしか集められない戦前・戦後の重要な資料も収集でき、1年目としては充分な成果が得られた。
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