本研究は障害当事者が自らを社会参加させるためにICTを主とするメディアを利用する際の「知」、リテラシーの積層を明らかにし、典型例のテータを収集・整理してその道筋を得ることが目的である。初年度は助成金額を受けて福祉領域でのICTメディアのリテラシーの骨格を描き出しデータ分析の基盤を作るべく、以下の作業に傾注して実績を上げることができた。 (1)フィールドにおける基礎調査 まず、社会参加のメディア・リテラシ「の基礎構造を明らかにしなければならない。本研究のオリジナリティを支える部分であるため、宮城県仙台市において現在ICTメディアを活用している障害当事者にインタビューし(国内調査旅費等)さらに障害者のICT利用の文献資料を収集することで(物品費等)土台づくりに傾注した。その成果として本研究の土台になる柴田(2006a)をまとめることができ、さらに規模を広げたアンケート調査の準備をすることができた。 (2)「知の積層」としてのメディア・リテラシーの先行研究整理と現状把握 もう一つがメディア・リテラシー研究を障害者における[知の積層」の観点から再整理する作業である。海外の先進例収集が必要なため、障害者のコンピュータ利用や社会政策の国際会議、現地調査をとおして、補助技術やICT利用調査のスケール開発状況を収集すると共に、国連のインターネット施策を議論する会合(IGF)にも参加し、今後の情報社会と障害者・高齢者の関わり方の把握に重点的に取り組んだ(海外調査費)。 また以上を生かして当事者の地域でのリテラシー蓄積を評価するシステムを考案し(物品費等)、障害者のIT補助技術の利用に関する会議(ATAC)で報告した。さらに本研究は、障害者の社会参加から、若者や女性など他の社会問題への応用を視野に入れているため、在職校である女子大学としての利点を生かし社会的マイノリテイの隣接分野の研究者の助力を得て基礎となるべきアンケート調査をまとめ(柴田2006b)、家族・コミュニティなどのファクターを抽出した。
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