研究概要 |
本研究は、障害当事者が目らを社会に参加させるために、ICTを主とするメディアを利用する際の「知」、リテラシーの積層を明らかにし、典型例のデータを収集・整理して、その道筋を得ることが目的である。本年度は最終年度であり、これまでの成果をまとめ上げる年度であった。色々な作業をおこなったが、特に以下を重点的に実施した。 1. データの集積・分析・整理と共有化 これまで実施してきたアンケート調査・フィールドワークの成果を整理し、そのデータを集積しつつ分析した。特にアンケート調査に関しては仙台市身体障害者福祉協会と東京都障害者ITサポートセンターにご協力いただけたことで、障害当事者が実際に直面する状況から、どのようにICTメディアを獲得し、利用していくかについての実態を把握できた。フィールドワークも含めて「知の積層」の在り方に、一定程度の結論を得る、その一部は柴田(2008)として報告されたが、加えて各種装置を中心とした試用感覚や、それに関連する知の在り方としてデータベースの形で整理しているところである。有意義なノウハウが多いが倫理的な配慮を欠かすことができないため、CD-R・DVDメディアとして、希望する障害当事者に限って共有できるようにすることにしている。2. 超高齢社会の潮流に再配置するかたちでの理論的な考察 以上の成果を、「超高齢化の先進国」としての日本の社会的な文脈に再配置し、「福祉社会化」と「情報社会化」の間に横たわる課題として理論化することで、本研究のまとめとした。残された課題は未だあるが、本研究の成果の一部が2007年日本社会情報学会奨励賞を受賞するなど、一定の成果は得られたと考える。以上をまとめた成果が、近日中にShibata(2009)として公刊され、また「社会に繋ぐためのメディア-障害者のICTと社会参加-』(春風社, 2009)として上梓する予定である。これらの成果を、進行形で交錯する福祉社会化と情報社会化に応答する、ひとつのきっかけとして提案したい。
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