今年度は本研究の最終年度であり、今までに行ってきた参与観察を中心としたフィールドワークの資料データの整理を行うとともに、科研費は主に調査旅費と中国から草の根NGOのリーダーを日本に招き、日中の草の根NPO/NGOの現状、課題、そして可能性について交流と議論を行う招聘プロジェクトに用いた。調査旅行は7月と2009年2月下旬の二回にわたって行った。7月は昨年度の交流の延長として日本のNPO関係者とともに中国のNGOを訪問し、継続的な交流の可能性を探った。2月の調査は、1月下旬に行った中国草の根NGOリーダーの招聘プロジェクトの効果を、インタビュー調査を通して明らかにするためのものであった。最も大きな出来事は1月の招聘であり、両国の草の根NGOの「顔が見える関係」を実現しただけではなく、1月22日に駒澤大学で開催した公開交流会では、実務的な交流を実現していくための方向性に関する深い議論ができた。 研究口頭発表としてまず6月には早稲田大学環境総合研究センター主催の日中環境ジャーナリスト・NGO交流シンポジウムの研究会に参加し、中国の草の根NGOの全体像と特徴に関する発表を行い、7月にはボランティア活動国際研究会主催のノンプロフィット講座で、NGO研究の視点から日中関係を考える発表を行った。11月には日本社会学会で中国の草の根NGOの社会的位置づけと特徴を分析した発表を行い、2009年2月は、シンガポール国立大学で開催された国際フォーラムで日本と中国のNGO/NPOの発展に関する比較研究の成果を発表した。研究論文として、四川大地震の発生を受けて、中国清華大学NGO研究所が発行する『中国非営利組織評論』に、阪神大震災後の日本のNPO領域の発展要因を分析した論文を投稿し採用され、掲載された。他にも日中のNPO/NGO領域の特徴を比較した論文を『日中社会学研究』に投稿し、査読中である。また、シンガポールの国際フォーラムで発表した内容も近く論文の形で発表する予定である。
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