研究代表者は、現代社会に対する社会学の理論的アプローチを構想するにあたり、ドイツの社会学ニクラス・ルーマンの社会システム理論に注目してきており、とりわけ、ルーマンその人がそうしていたように、一般システム理論と社会学理論との関係についての討究を進めてきている。研究代表者は、本研究の初年度となる平成18年度(2006年度)を、研究に必要となる環境整備のための一年と位置づけ、社会システム理論に関する国内外の研究文献や資料の収集・整理や、各種学会大会・研究会への参加による情報収集といったことを行ってきた。またそれと並行して、ルーマン最晩年の大著であるDie Gesellschaft der Gesellschaft(『社会の社会』;原著1997年公刊)の日本語訳にも携わってきた。こういった研究活動を通じて、研究代表者は次のような見通しを得た。すなわち、一般システム理論におけるフィード・バック概念の新たな展開やそれと関連する概念群が、社会システム理論においても重要な位置を占めており、またこれらのシステム理論的概念によって、社会学の主要な理論枠組、あるいは主要なテーマを再解釈することができるだろう、ということである。このような考えのもと、研究代表者は、社会システム理論を現代社会の研究へと接続させるための一歩として、社会・経済システム学会第25回大会(於・神戸大学)において「『第三の道』と社会システム理論」(単独報告;平成18年10月15日)と題した報告を行った。この研究実績に加え、雑誌論文の執筆およびその他の学会報告の準備も進めつつある。だがこれらの研究成果の公表およびルーマン『社会の社会』日本語訳の公刊については、次年度以降にずれ込む見通しである。
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