平成19年度の研究活動としては、関西社会学会大会シンポジウム「オーラルヒストリーと歴史」での報告、マス・コミュニケーション学会ワークショップ「総力戦と女性の動員メディア再考」での登壇(討論者として)、同時代史学会研究会「社会学と歴史学の接点をさぐる-『戦争体験』の問題を中心にして」での報告など、研究成果の中間報告といった意味合いの強いものがまず挙げられる。研究申請書で挙げた「地域」という視点の可能性の探究については、「オーラルヒストリーと歴史」シンポジウムでの報告「地域社会と戦争の記憶」において提案することができた。この報告は、同学会編『フォーラム現代社会学』第7号(印刷中)に掲載される予定である。一昨年に慶應義塾大学のCOEプログラムのシンポジウムで報告した「『戦争体験』とは何か?」も本年度出版された濱日出夫編『戦後日本における市民意識の形成一戦争体験の世代間継承』に収められているが、この二つの報告は、歴史学と社会学の対話の場を設けようとした同時代史学会の研究会「社会学と歴史学の接点をさぐる-『戦争体験』の問題を中心にして」での報告に繋がった。「戦争体験」「戦争の記憶」に関する研究成果を背景に、非常に緊張感に満ちた、実りのある対話を歴史学の研究者たちとすることができた。また、NPO団体「地球市民アカデミア」に依頼され、戦争の記憶と私たちの社会の<っながり>をテーマに講演をしたが(「現代社会をどう捉えるか〜過去との対話を通して」)、自分の研究を一般市民社会に披露する機会であったばかりか、受講生との質疑応答は普段気づかない見地を提供してくれた。 一方で、本年度は調査データの整理や歴史博物館に関する資料収集は行えたものの、喫緊の状態である戦争体験者への聞き取り調査は顕著には進められなかった。最終年度に向けての課題となる。
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