本年度においては、ひとつには以前からの調査研究の成果をまとめること、もうひとつには新たな調査対象先の選定と依頼、プレ調査を行った。 成果をまとめるに当たっては、ふたつの成果をまとめた。第一に、阪神・淡路大震災におけるボランティアが、仮設住宅での被災住民への支援活動から、固有性に応じた支援とは何かを問い直した。そのつど「うまくいくかもしれないが、いかないかもしれない」というあいまいな局面へと問題をずらしていくことによって、なかなか支援の行き届かない人々へ届く支援を実現してきたことを指摘した。第二に、首都圏内にある特養Aでの調査研究に基づき、介護職と看護職の連携を新たな観点から捉えなおすこととした。特養という場の組織特性を、不確実性がそこに存在することを飛ばしたり見過ごしたりしないことが求められる場と位置づけ、そこでの介護識と看護職が不確実性を共有した協働を展開することの重要性を指摘すると同時に、そのために「思い」という表現が言語資源として機能していることを指摘した。 この二つの成果をまとめる中から浮かび上がってくるのが、固有性に応じた視点を行う上での組織論の必要性であり、ケア論と組織論の接合である。この課題に取り組むため、関西地域の特養Bと多摩市内の障害者支援団体に伺い、プレ調査を行った。現段階だけでも、ケアに向けた組織の柔軟性やミッションの多義性が必要なことに加え、組織分割や責任主体の変動などがケア実践に及ぼす影響が明らかになりつつある。
|