第一に、特養ホームでの聞き取り調査と準参与観察を行う中から、生活上で他者の支援を必要とするという経験の内実について理論的に考察すると同時に、その中でもその人の生活をその人自身のものとしていくための手法について、特養ホームがそれぞれにおかれた環境や状況に応じて存在することを確かめ、その理論化を試みた。生活をつくるという試みは、介護職一人ひとりの努力を超えて、人を含む空間や関係性として生み出さなくてはならず、また環境や状況に応じてさまざまな形となりうる。個別具体的な事例に基づきながら、一般化を試みた。 第二に、知的障害者の自立生活を支援する中で、自身の生活を独力で築き上げることが困難な人にとって、支援とはいかなる意味をもつのかを考察した。当事者の意思を了解するとはどのようなことか、そこでの工夫、あるいは生活をまわしていくという根幹にいかにして他者がかかわるか、また当事者自身が支援者を含む(しかし支援者だけではない)他者とのかかわりをいかにして育み、それを支援者はどう支援するのか。多摩地域における実践に一年間にわたって密接にかかわる中がら、これちのテニマを導き出し、理論的考察を試みた。 これらのテーマは、ケアや支援において根本的な、他者を支え、その人が生きるということをどう周囲が支えていくかという問題に深くかかわる。そめ具体的なあらわれについて解きほぐす上で重要な手がかりを得られた。
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