本研究においては、申請者が平成16年度、17年度に若手研究(B)の補助金を受けて実施した「沖縄県内の児童養護施設職員に対する継続的・効果的研修会のあり方に関する研究」の成果を踏まえ、そこで有効性が明らかとなった解決志向アプローチを、児童相談所における児童虐待ケースへの対応へと応用していくための研修手法を確立することを目的に研究を行っている。初年度である本年度においては、関連情報の収集を中心に行った。一つは米国における情報収集で、10月と3月の2回、それぞれカリフォルニア州San Louis Obispo郡、ニューヨーク州ニューヨーク市を訪問し、児童虐待への対応における解決志向アプローチの実情について文書資料の収集及び、実践を行っているソーシャルワーカーに対するインタビュー等を行った。その中で、本技法の児童虐待場面での有効性は改めて確認できた。加えて、日本同様にリスクアセスメント等の医学モデルを基盤にした組織文化に、それとは視点の異なる本技法を導入する上では、全体的な研修等による普及と同時に、コアとなる小集団による研鑽が必要であることも示された。そのコア集団が、スーパービジョンも用いながらの実践における新たな技法の適用を継続して実施してその有効性を確認し、それを「口コミ」で伝達することで、その他の職員も新たな技法に興味・関心を示し、それが組織の中で定着していくというプロセスである。また、直接訪問時及び、インターネットによる検索等によって収集された英文資料において特に重要な内容のものは日本語への翻訳も行った。このような米国の実践における関連情報の収集以外に、沖縄県内における児童相談所の職員研修も2度実施した。その中で、本技法を用いた米国における家庭訪問の説明に関しては、沖縄における実践でも有効性が予想されるという反応がみられ、次年度における継続的研修会を実施する基盤を形成した。
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