本研究においては、申請者が平成16年度、17年度に若手研究(B)の補助金を受けて実施した「沖縄県内の児童養護施設職員に対する継続的・効果的研修会のあり方に関する研究」の成果を踏まえ、そこで有効性が明らかとなった解決志向アプローチを、児童相談所における児童虐待ケースへの対応へと応用していくための研修手法を確立することを目的に研究を行った。最終年度である本年度においては、引き続きの関連情報の収集とともに、これまで収集した情報の現場での適応に関する聞き込みを実施した。関連情報収集としては、英国のゲイツヘッド市における本技法を中心技法として展開されている児童虐待初期対応実践に関する情報収集を行い、加えて、米国において実施されたインターネットを用いた本技法の児童虐待への対応に関する研修内容の翻訳を実施した。聞き込みは沖縄県内児童相談所の児童虐待対応を担当するソーシャルワーカーに実施し、具体的方法としては、これまでに収集した関連情報を勉強会の形式で呈示し、実際に児童虐待対応へ本技法の適用が可能かを検討した。その結果として、本技法に含まれる基本的視点や具体的質問内容については適用が可能であるもの多いということ、ただし、沖縄県の現状として、虐待のリスクアセスメントと保護者との関係作りや支援を同一のワーカーが実施せざるを得ず、このような中では、本来有効であるはずの技法も、リスクアセスメントに伴って形成されやすい保護者の不信感が存在する状況下では実施自体が困難であるか、実施しても効果が消失する可能性が極めて高いということ、この課題を克服するために、同一ケースに対してリスクアセスメント担当と、支援担当の2者を割り当て、後者が主に本技法を活用していくという体制の可能性が示唆された。また、精神疾患等の特徴を持つ保護者に対しては、本技法の適用はかなり限定されるということも予想された。
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