本年度は、第2期0障害福祉計画の策定年度に当たることと、本プロジェクトの最終年度に当たることから、各自治体に対する知識の提供と、過去2年間につくりあげた成果の総括的論文を執筆した。 1. 大阪府、同八尾市、兵庫県豊岡市等の障害者施策に関するニーズ調査の企画支援 : 質問紙調査のサンブリング、ワーディング、クロス集計の仕方、およびグループインタビューの企画。田垣(2008)を参考資料として、質的調査の意義を行政職員と、審議会委員、住民に説明した。 2. 学会における質的研究の基礎の講演 : 日本老年社会科学会等において、研究者、医療福祉従事者、大学院生を対象に質的研究の基礎的知見を講演した。特に、質的研究が量的研究と認識論的に異なること、実践知の学問知への発展に有効であることを説明した。また、看護学の研究者らにも質的研究の講演をした。 3. 本学紀要に、質問紙調査の自由記述をKJ法とテキストマイニングの双方を使って分析する論文を掲載した。主たる知見として、テキストマイニングでは頻度の高い語の関連は見つけられるのに対して、KJ法では頻度の高低に限らず内容上の関連を見つけられやすいこと、KJ.法では、主成分分析よりも、結果に関する具体的ストーリーを描きやすいこと、テキストマイニングでは、医療、教育、就労は分野ごとの分析でよいが、社会参加、サービス、町作りはセットにし手分析したほうがよいことが得られた。 4. 上記以外に、自治体の障害者施策における質的データの活用の実態に関する英語論文を執筆し始めた。だが、十分な論理展開や、海外の評価あるジャーナルに採択されるほどの知見を見出すことが困難だったため、今後の課題となった。
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