平成18年度は、まだ調査を実施していない都道府県のうち、秋田県、山梨県、島根県、鳥取県において資料収集調査を実施、各地の在宅福祉事業に関する資料収集に努めた。その結果、秋田県、島根県、鳥取県において、昭和38年の老人福祉法施行以前に各自治体独自の在宅福祉事業が開始されていたことが明らかとなった。一方で、山梨県においては事業の詳細を記した資料が見つからなかったため、次年度継続して調査する予定である。 これらの自治体では、ボランティア団体や社会福祉協議会等への委託を通じてこれらの事業を実施しており、こうした事情もあって、昭和38年度に厚生省が把握していた在宅福祉事業実施自治体からこれらの自治体が抜け落ちていた。こうした状況を勘案すると、今後も全国各地での地道な資料収集が必要となりそうである。 平成17年度以前の調査結果と今回の成果を合わせて考察すると、(1)早くから家族や老人の問題が顕在化していた自治体ほど在宅福祉事業も早期から開始される傾向がある(例:秋田)というニーズ側の要因と、(2)サービス提供の担い手が確保しやすい自治体ほど在宅福祉事業も早期から開始される傾向がある(例:大阪、京都)という担い手側の要因の両方が、自治体の在宅福祉事業導入に影響を及ぼしているように見受けられる。 よって、今後は(a)昭和30年代以降の日本において、家族や老人の問題がどのような経緯で顕在化し始めたのかを調査すると同時に、(b)サービス提供の担い手となりうる人々(例:寡婦)に対する福祉施策が在宅福祉事業の実施とどのように関連していたのかを調査するという作業を通じて、日本の萌芽期の在宅福祉事業の形成に影響を及ぼした社会的要因についてさらに考察を進めたい。
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