平成19年度は、主に国立公文書館および国立国会図書館において、1954(昭和29)年から1961(昭和36)年までの時期における厚生年金保険および国民年金に関する公文書、議会資料等の第1次史料および研究論文等の文献資料の収集に努めた。同時期は国民年金が創設された時期でもあるため、とりわけ国民年金の創設に関する資料の収集に注意を払った。なお、収集した資料の分析は平成20年度の課題とした。 また、公的年金制度がどのような経緯で現行の制度体系となったのか、全体像を把握した上で課題を分析するために、公的年金制度の歴史的展開について文献資料を参考に整理した。これによって、厚生年金保険および国民年金に規定された国庫負担については、以下のことが把握できた。 厚生年金保険については、1954(昭和29)年の全面改正の際に、報酬比例制の年金給付について、国庫負担を含みながらも高所得者に手厚く低所得者に手薄となり、社会保障の理念に反すると批判されていた。 他方、国民年金については、1959(昭和34)年の成立の際に、拠出された保険料の2分の1を国庫が負担すると規定されていた。事業主負担がない上に、被保険者の拠出能力が相対的に低いと判断されたために、当初より厚生年金保険に対する国庫負担に比べて高率であった。さらに、厚生年金保険では給付時に行っていた国庫負担を、国民年金では拠出時に行うこととしたのは、国庫負担を保険料とともに積立金に繰り入れて運用することで、利益の増大を図るためであった。
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