次の2つの作業を並行して行った。 1.地域生活支援の実態へのアプローチ これまでの地域生活支援は、自発的な事業体が中心的にその役割を担ってきた経緯があり、それを中心として実態把握のためのヒアリング調査および文献研究を実施した。これまでの研究では、(1)知的障害者の地域生活支援が通所系サービスを基点としたサービスパッケージが形成していること、(2)その形成プロセスは核となる事業体の事業展開に依拠することを指摘してきた。本申請研究では、施設を核としないサービスの利用構造とそれを担うコーディネーターの実績に注目した。それはコーディネーターによる個別の相談支援体制のみではなく、支援のネットワーク化やイノベーション的要素を含むものであり、これまで先駆的に取り組んできた事業体および自治体を調査対象とした。 2.都市におけるシステム設計へのアプローチ 都市の障害福祉行政が、地域ケア推進のための分権的な計画空間をどのように形成しうるのかについて、行政職員との共同研究として、次の2点を取り組んだ。なお、研究対象には、研究計画に挙げた愛知県豊田市に加え、新たに高浜市を設定した。本研究が特に重視したのは、「市町村障害福祉計画」の策定のための審議会や、制度運用を担う「地域自立支援協議会」といった「協議の場」である。協議の内容や結果が計画上にどのように盛り込まれたか、あるいは「協議」機能をどう計画化したかについて、行政職員との共同研究会の中で検討した。 なお、障害福祉計画は2市ともに本年3月に策定されたばかりであり、自立支援協議会については3月末に試行的に始まった段階にあって十分な分析には至っていない。地域自立支援協議会の全国動向も踏まえながら、2市の相対的な比較の中で分析を進めているところである。
|