本研究の主題である地域生活支援システムの1つとして、今年度は障害者自立支援法が市町村に設置を義務付けている「地域自立支援協議会」に焦点を当てた。具体的には次の3つのアプローチを選択した。 第1に、制度改革以前に圏域単位で公私協働によりシステムを開発してきた事例として滋賀県を取り上げ、その歴史的展開について調査した。滋賀県のシステム化を主導したのはコーディネーターである。コーディネーターは地域に不足するサービス資源を開発する役割を担ったが、その資源開発は新たなサービス開発だけを想定するものではなく、組織的なサービス調整による解決と、既存サービスの再編・統合化を前提としたことが特徴といえる。そして、その条件となったのが、自立支援協議会のモデルとなった「サービス調整会議」という公私の協議の場であった。 第2に、自立支援協議会の計画化に関する実態把握である。愛知県下の全市町村を対象に調査を実施した。結果、多くの市町村では構成メンバーや協議体の構造をどう設計するかについて試行錯誤の状況であること、またすでに設置している市町村においても、協議会がシステム運用を担うという認識が乏しいことが判明した。 第3に、自立支援協議会の計画化およびその運用段階への参与観察である。調査対象は、愛知県豊田市である。豊田市は、支援費制度の導入を契機に、市独自の「障がい者生活支援ネットワーク」を構築するなど、相談支援体制を強化してきた経緯がある。そこで自立支援協議会は、こうした既存のネットワークを基盤として、重層的な独自の3層構造で設計した。それは、相談支援事業における個別支援の経験を地域課題へと集約させる「ボトムアップ」と、自立支援協議会そのものの「自律性」を担保しようという市の判断がある。こうした自立支援協議会の独自の構想が有効に機能するかを、実際の運用過程で検証することを今後の研究課題としたい。
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