2004年度の法改正により、児童虐待への相談対応については、保護者に相談への動機がある場合は市町村で担い、問題意識がなく、強権的な介入が必要な場合は児童相談所が担うこととなった。これからの児童相談システムには、自らの権利や意見を表明することの困難な子どもの最善の利益を保障する視点が必要である。その際、子どもの生命を守るための強権的な介入はひとつ間違うと人権侵害の恐れもあり、児童相談所の判断の一層の専門性と客観性が求められている。本研究から児童相談所の専門性の概念については、以下の9つに分類された。すなわち、「経験」「知識の蓄積と多様な視点」「スーパーバザーの整備」「職員研修の機会」「専門職の配置」「チームアプローチの確立」「医学と法律」「診断体制の強化」「専門家による総合的判断」となった。また、客観性の概念については、以下の8つに分類された。すなわち、「援助方針決定のプロセス」「当事者参加と第三者機関の設置」「審議会からの意見聴取」「虐待防止ネットワークの充実」「関係機関との情報共有」「各種専門家の多角的な視点」「スーパービジョン」「アセスメント」となった。児童相談所の援助方針決定において、当事者の参加が十分に考慮されているかは、「子どももしくは保護者の意向が児童のと一致しないとき」の援助のあり方が判断になる。このような児童相談所の専門性が最も発揮されるべき状況において、子どもの最善の利益の把握やこれに基づく親への代弁・説得・調整・強制的介入、司法機関等関係機関との調整等が必要となる。またその判断の客観性が求められる。つまり、児童相談所の援助方針決定における当事者参加に関しては、当事者と児童相談所の調整を従来のケースワークによる援助に加えて、第三者的機関(現状では児童福祉審議会への意見聴取)を交えた援助を担保する児童相談システムの構築が求められる。
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