日本のNPO及び市民活動家がアドボカシーを実施するに当たって、組織論、歴史的アプローチによってネットワーキングの重要性を明らかにし、同時にその概念に内在するパラドクスを実証的に明らかにした。「当局」に対するアドボカシーを成功に導くには、単線的な手法ではなく、アドボカシーのプロセスで関わる多様なアクターとの「ネットワーキング」に規定される部分が大きい。同時に、ネットワーキングという概念自体は多くのパラドクスを内在しており、本研究では金井嘉宏の「企業者ネットワーキング」理論を援用しつつ、そのパラドクスを具体的に明らかにし、それを克服するための手がかりを明らかにしていった。NPOがアドボカシーを成功させるためには外部環境の変容に適応した戦略が必要となるものの、その構成要素は「プレーイングマネージャー」の役割等、一定の普遍性を持ち得ることを示し、構成要素を一定程度精緻化することができた。従来、看過される傾向にあったNPOのアドボカシーのプロセスを一定程度可視化したといえる。また、本研究を通して新たにアドボカシーにおけるNPOリーダーのリーダーシップが浮かび上がってきた。
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