研究課題
本年度は本研究の1年目にあたるため、基礎的な研究を行った。具体的には、本研究においてキー概念となる、ソーシャルキャピタルおよび、ソーシャルアントレプレナーシップを取り上げ、それらの概念が、非営利組織(NPO)や、介護事業の革新に与える影響について先行研究の考察を行った。その結果、ソーシャルキャピタルが事業革新・起業に及ぼす影響は認められるものの、それは営利企業の分析に留まり、非営利組織のそれについては充分でないことが分かった。また、ソーシャルアントレプレナーシップ概念は欧米を中心に概念的な議論が先行しており、その構造や過程については、未だ十分に解明されていないことも明らかとなった。また一方で、「小規模多機能ホーム」を調査し、ソーシャルアントレプレナーシップの起業において、必要な資源を動員するために、どのように社会関係資本を活用しているのかを分析した。ソーシャルアントレプレナーシップの起業においては、その社会革新性の高さから資源動員に困難を伴うこともあり、その際、社会関係資本の活用が重要となることが示唆された。さらに、小規模多機能ホームの、起業後の様々な相談事に対しては、同業者ネットワークが強い影響力を発揮していることも明らかとなった。これは、小規模多機能ホームの連絡会が存在している都道府県において顕著であった。このことから、ソーシャルアントレプレナーシップの育成のためには、同業者ネットワークの形成を図ることが重要ではないかと考えられる。本研究は継続中であり、今後、サンプル数を増やし、仮説の実証をより信頼できるものとしていきたい。なお、これらの研究成果については、下記の論文等において公表したほか、2007年3月に開催された日本NPO学会第8回年次大会にて報告している。
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立命館人間科学研究 14号
ページ: 13
立命館大学高等教育研究 7号