本研究では、介護保険制度が「地域の特性」に応じた制度へと発展するために、地域での高齢者を支えるという視点をさらに具体化したサービスといえる「地域密着型サービス」に焦点をあて、施設の運営状況やその利用者の生活実態の現状と課題に迫ろうとするものである。そして、「地域の特性」考慮した制度設計について検証を行うため、調査対象を大都市(大阪府)、山村・漁村・離島を含む地方都市(愛媛県)とし、当サービスを比較・検証する。これらの検証を総合的に踏まえて、今後の「地域の特性」を反映させた介護保険制度の発展にむけての課題を明らかにしようと考えている。 本年度の研究実績として、先行研究の資料収集・分析、ヒアリング(地域包括支援センター・夜間対応型訪問介護)を行った。まず、2005年改正によって新しく実施された地域密着型サービスについては、そのサービスの意義やこれまでの各地域での取り組みが紹介された論文・著書の収集・分析、介護保険制度上における地域密着型サービスのデータもできる限り収集・分析した。 次に、2005年改正で新しく創設され、地域密着型サービスとも非常に関係している地域包括支援センター(1カ所・愛媛県松山市)を訪ね、2005年改正以後の介護保険制度の現状を全体的な面について専門職(社会福祉士)にヒアリングを行った。そして、地域密着型サービスの中でこれまでの介護保険制度上でも行われており、他のサービスよりも現状が把握しやすい夜間対応型訪問介護(大阪府・3カ所(サービス事業者5カ所中))に対してもヒアリング調査を行った。ヒアリング項目では、サービスを開始するにあたっての背景、夜間対応型訪問介護の状況(サービス利用状況や経営の視点から)、介護保険制度改正の意義と実践現場での影響、夜間対応型訪問介護の今後の課題について、などであった。それぞれの事業所の特徴が明確になりその厳しい運営が明らかになった。
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