平成18年度の研究は、質的研究として、介護老人福祉施設で苦情解決責任者(施設長クラス)と苦情受付担当者(ソーシャルワーカー)の経験者、居宅介護支援事業をおこなう介護支援専門員の経験者、苦情解決機関の相談員など合計15名を対象に、半構造化面接法を用いてインタビューを実施し、社会福祉サービス分野における苦情をどのように捉えているか、また、その苦情にどのように対応(ソーシャルワーク)しているかの実践内容を収集した。現在、その結果を分析中であるが、結果の一部を紹介すると、2000年4月以前から社会福祉分野で従事してきた者(措置時代には苦情はなかった、もしくは言えなかった。ただし、苦情になる前にソーシャルワーカーが受け止め対応していた。介護保険後にも目立った苦情は発生していない等)と介護保険制度を契機にもの分野で従事するようになった者(苦情が言いやすくなったのはいいが、対応に苦慮する内容があり困ることがある等)、また、大学等で社会福祉に関する専門職教育を受けた者(苦情は社会福祉法以降、権利擁護として認識されるようになったことはいいこと。しかし、利用者主体と受容の精神で実践すると、どこまで対応すべきか悩むことがある等)と他分野から一般企業等での社会経験を経て従事するようになった者(制度や介護報酬の枠組みのなかで、どこまで対応すべきか一線を決めて割り切って対応している。苦情対応は消費者満足(CS)の一環である等)とで、苦情の捉え方および苦情解決技法に違いがあることが分かってきた。本年度の質的研究の結果、非常に興味深い内容の発現があった社会福祉以外の分野からこの分野に従事するようになった者に対して、追加して情報を収集する価値があると考え、次年度にも5名程度のインタビューを、本年度同様の内容で行う予定である。
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