平成18年度および平成19年度の2回にわたる現地調査を通して得られた結果をもとに、スウェーデンにおける障害者就労支援策の分析・検討を進めだ結果、以下の事項が明らかになった。 (1) スウェーデンにおける障害者雇用の重要な柱であった国営会社サムハルは業績悪化に伴い、2002年以降、基幹事業を製造業から人材派遣業にシフトさせるなど大規模なリストラを行っている。その結果、2007年以降、徐々に収益は回復しつつある。 (2) 近年はサムハル以外にも、民間企業MISAや社会的協同組合などが障害者雇用の担い手として参入しており、政策遂行アクターの多元化が進んでいる。その結果、障害者にとっては労上の選択肢が増え、自身の能力やライフスタイルに合わせて働き方を選べるような環境が整ってきた。 (3) このような政策アクターの多元化と同時に、各地方自治体では各地域の事情に応じた、特色のある障害者雇用対策が進められるようになってきている。ソルナ市やヤルファラ市といった財政的に豊かなコミューンでは障害者福祉サービスのアウトソーシングが積極的に進められており、障害者雇用に関してもMISAなどの民間企業との提携が盛んである。また、セーデルタリエ市では、市と県がゴード(庭園)と呼ばれる事務所を協働で設置し、ブリッゲンなどの協同組合とネットワークを結びながら障害者雇用対策を展開し、一定の成果を挙げている(セーデルタリエ・モデル)。 (4) 障害者雇用を担うこれらの民間企業や協同組合のほとんどが市や国など行政からの補助金を財源として運営されている。また、協同組合で障害のあるメンバーをサポートしている指導員も市から派遣された職員である。 (5) これらの点から言えば、行政機関による財政面や人員面での力強い公的支援策を通して、障害者の自立を支援するというスウェーデンにおける障害者雇用対策の基本的な考え方は、障害者雇用のあり方が大きく変化しつつある今日にあっても、なおも貫かれていると言える。
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