家族介護者7名に対して行った「介護の大変な点」「サービスは頼りになるか」「介護疲れについて」といった内容にかんする半構造化インタビューをデータとして、介護の困難性、なかでも専門職とのかかわりについて焦点をあて分析を行った。特にかかわりのあるサービス・専門職として、ケアマネージャー、デイサービス、医師があげられ、それぞれの専門職の家族介護者への言葉、接し方、かかわり方によって、介護負担感が増したり、絶望感に襲われたり、孤独・孤立感に苛まれることが語られた。サービス職員・専門職がとる、事務的な対応、決められた時間のみの対応、知りたいことに対して情報提供がなされない対応等に家族介護者は傷ついたり、不信感を抱いたり、不満を持ったり、将来への不安を強くする様子が語られた。そのような状況であっても、「お世話になっている」「迷惑をかけてはいけない」との思いを持っていたり、介護保険制度の情報が不足していたり、不信感が強すぎるため、現状に我慢し(もしくは、現状に我慢するという選択肢しか知らない)、そのことがいっそう介護負担感を強くしているというスパオラルができていた。インタビューにおける家族介護者の語りからは、決してサービスや専門職が身近な存在として考えられておらず、介護負担の軽減に役立っているとは言いがたい現状が示唆された。 上記の家族介護者へのインタビューをもとに、「サービス職員や専門職の対応によって介護する気持ちが変わる」「家族介護者は、介護について迷惑をかけるという気持ちをもっている」という仮説をたて、検証のため、「家族介護者とサービス利用について」のアンケート調査を行った。A県で活動している家族介護者当事者の会161名に郵送、61名より返送されたアンケートをデータとした。結果として、サービス職員やケアマネージャーの声かけを冷たい、または事務的に感じたことが「全くない」との回答が多かったり、サービス職員やケアマネージャーは「とても頼りになる」との回答が多かった。インタビュー調査ではサービス職員やケアマネージャーからもたらされた「傷つき」「不快な経験」が語られたが、アンケート調査では同様な傾向は見られなかった。詳細な分析を今後行っていくが、現時点で考えられる要因として、サービス職員やケアマネージャーの力量の違いがあげられる。サービス職員やケアマネージャーによって、家族介護者の介護における経験の内容が変わり、介護に対する思いも変化するのであれば、サービス職員やケアマネージャーの力量の一定化、均質化が求められる。 インタビュー調査、アンケート調査ともに、未だ分析の余地があり、質的研究、量的研究といった社会福祉学における研究方法論とも併せて、引き続き分析・検討を行っていく予定である。
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