研究概要 |
本年度は、高齢者福祉施設におけるケアワーカーの職務ストレスが燃え尽き症候群及び離職に与える影響について詳細に分析し、燃え尽き症候群及び離職を防ぐ方略に関する提言を行った。具体的な研究結果・実績を以下に記す。 1. ケアワーカーの職務ストレスと燃え尽き症候群の関連 前年度調査によって得られたデータを用いて、ケアワーカーの職務ストレスと燃え尽き症候群との関連を検討した。具体的には、職務ストレスの原因となる職場環境ストレッサー尺度を開発し、基本属性及び燃え尽き症候群を含んだ包括的モデルを構築した上で、構造方程式モデリングを用いて分析を行った。その結果、ケアワーカーの精神的健康を維持するためには、過重労働や時間外労働などの仕事における量的負担を軽減しつつ、仕事に対する適性を高める必要があることが示唆された(安部・大橋, 2008, 日本心理学会第72回大会発表)。 2. ケアワーカーの燃え尽きに関する新たなモデルの構築 ケアワーカーの燃え尽き症候群との関連要因として、介護施設において提供しているサービスの質に着目して分析を行った。その結果、サービスの質とケアワーカーの精神的健康(GHQ-12)及び燃え尽き症候群(MBI-GS)との間に有意な関連があることが認められた(Abe & Ohashi, in press, Journal of American Medical Directors Association)。本研究によって、それぞれの職員が働く施設のサービスの質が、燃え尽き症候群へ影響を与えていることが示唆されたため、今後は職員に対する研修や教育体制の向上が、高齢者のQOL向上のみではなく、職員に対して与える影響についても、ストレスや離職防止の観点から検討していく必要があると考えられた。
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