研究目的は、人々が資源交換による相互協力を実現し、地域社会を発展させていくプロセスを解明することである。研究実績の概要は以下の通りである。 1.地域社会で歴史的に培われてきた資源交換として、講集団(rotating savings and credit association)をとりあげた。講集団では、参加者たちが定期的に資源を出資してファンドをつくり、そのファンドを各参加者が順番に受領していく。講集団が活発な地域のひとつは沖縄であり、「模合」(モアイ、ムエー)と呼ばれている。模合の事例研究から以下の結果をえた。(1)講集団が自営業経営や危機事態への対処に活用されている。(2)フリーライダー問題を解決するために、講集団ではお互いを熟知する面識関係にもとづき参加者を選抜する。(3)ひるがえって、講集団を継続することが、面識関係の強化につながる。(4)これらの特徴が結びつくことにより、資源交換の内生的な維持・発展が可能になっている。 2.講集団の特徴は、見知らぬ他者を加入させず、集団として資源交換を発展させることにある。世界各地の交換慣行に関する文献を収集し比較分析に着手した。現時点での分析の概要は以下のとおりである。(1)牧畜民など移動性の高い文化圏には、2者間で資源交換を行い、個人として交換を拡張している場合がある。(2)個人として交換を拡張していく場合にも、フリーライダー問題を解決する仕組みが存在する。(3)講集団のような集団による交換と、個人による拡張的な交換との違いの背景には、生態環境の差異があることが示唆された。 3.沖縄以外の地域との比較を行うために、秩父地域での調査に着手した。地域社会の祭事における交換と協力が存在していることが明らかになった。
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