今年度は3つの研究を行った。1つ目は「フリーター回避意図に及ぼす脅威アピール説得の効果」に関する研究である。フリーター(特に無目的型フリーター)への志望を抑制するためには、フリーターという生き方のリスクを理解させることが重要であると思われる。そこでこの研究では、フリーターに関する様々なリスクを描写する脅威アピール説得がフリーター回避意図に及ぼす影響を検討した。その結果、脅威アピール手法がフリーター回避意図を促進する結果が得られた。2つ目の研究は、「フリーターへの意識に及ぼす自己説得技法の効果」を検討したものである。周囲の人々によるフリーター抑止説得は若者の反発を招き、説得無視あるいは逆方向への態度変容を引き起こす可能性がある。そこで、そのような反発が少ないと推測される自己説得技法の効果を検討した。分析の結果、フリーター回避意図に及ぼすはっきりとした自己説得技法の効果は見いだされなかったが、部分的に自己説得技法の効果を期待させる証拠が見いだされた。今後、実験材料を見直すなどして再確認が必要であると思われる。3つ目の研究は、「フリーターに対する高校生の意識」を調査したものである。この調査の結果、高校生のフリーターに対する意識が大学生のそれと非常に似通っていることが明らかとなった。また、フリーターと正社員の経済的余裕、心理的余裕に関して、男子高校生と女子高校生の予想に差が見いだされた。これらの研究によって、高校生や大学生のフリーターに対する意識が明らかとなり、フリーター抑止説得において脅威アピール技法や自己説得技法が有用であることが示唆された。
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