本研究は、日中韓のアジア文化間比較において、批判的コミュニケーションがどのような場合に表出/抑制され、どのような対人的効果をもたらすかについて、各文化特有の構造を明らかにすることを目的とする。本年度は19年度に行う日中韓米比較調査の準備段階として位置付けた。 1.インタビュー調査 中韓の大学院留学生と日本人大学院生に対し、国ごとにフォーカスグループインタビューを実施した。その結果、中国人は親密度によって批判の表出/効果が規定される一方、韓国人は地位差に基づいた判断をすることが示唆された。また、中国人は日常的な批判を想起するが、韓国人は価値観の違いなど根本的な批判を想起すること、日本人は批判に伴う懸念が強いことが示唆された。 2.質問紙調査 (1)研究室内の日本人、および、研究室外の自国出身の周囲他者(目上・目下・対等の3名ずつ)との関係について、自他の批判の頻度や関係評価を尋ねた。その結果、研究室内の批判頻度は、中韓の差はあまりないが日本人は相対的に頻度が低かった。研究室外の関係においては、中国人は対等関係での頻度が高く韓国人は目上からの頻度が高いが、日本人は全体的に頻度が低かった。次に、批判は基本的には関係評価を高める効果が示されたが、研究室内で韓国人が目下から受ける批判には効果がなく、日本人が対等な人から受ける批判の効果は小さかった。さらに、中国人は地位差に依存せず批判を返報するが、韓国人は相手が目上の場合に、日本人は相手が目上または目下の場合に返報性が弱かった。以上により、地位差や公私の要因の効果が国によって異なることが示唆された。 (2)親密他者を1名想起してもらい、設定された状況で批判を表出する際に配慮する要因、批判を受ける時の反応について尋ねた。その結果、表出/効果は、中国人は親密度、日本人は勢力差によって規定され、韓国人はその中間と位置付けられることが示唆された。
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