1.研究目的: 「喪失」とは、愛情や依存の対象を、その死や生き別れによって失う体験のことであり、大切な人やモノ、環境や地位など様々な対象が挙げられる。本研究の主目的は、喪失体験後の心理・社会的変化や、喪失対象における「形見」の心的機能について検討することであり、本年度は郵送調査2回、集合調査1回、面接調査1回と計4回の大きな調査を実施した。ここでは特に人形供養に関する郵送調査結果を報告する。 2.研究方法: 〓調査目的→自発的喪失の一つのフィールドとして「人形供養」に着目。供養のもたらす心理的効果や、モノの処分方法として供養を選ぶ人とそうでない人との性格特性の違いを検討。 〓調査方法→(1)奉納者:門戸厄神東光寺(兵庫県西宮市)に人形を奉納に来られた方に質問紙を渡し、後日郵送にて返信して頂く。配布数1500、有効回答数492(回収率32.8%)。 (2)統制群:(1)と比較するために、奉納者以外にも人形供養に関する意識調査を実施(郵送留置法)。調査会社のモニターを使用。配布数350、有効回答数307(回収率87.7%)。 〓調査時期→(1)奉納者:2006年5月〜11月 (2)統制群:2006年9月〜10月 3.研究成果(現在までの分析で得られた主な知見): (1)供養後の心理的変化としては、"安心した"、"スッキリした"など肯定的な意見が多くみられた。 (2)奉納者と統制群(供養経験者は"奉納者"として分類)では、以下のような性格特性の違いがみられた。 ・奉納者は統制群に比べて、理論的かつ非権力的であり、審美主義的である。 ・宗教に対する関心や信仰心も強く、それは祈りを捧げたりお守りを持ったりするなどの行動面にも反映されている。 (3)奉納者は統制群に比べてモノを人格化する性向があり、モノに対する愛着も強い。また霊魂や死後の世界、占いなどの神秘現象を強く信じることも認められた。
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