本研究では、親密な他者に対して自己高揚的自己呈示を行うことが自尊心や精神的健康の高揚、維持に寄与するプロセスを検討することを目的としている。Swann et al.(2002)は戦略的自己確証モデルを提唱し、親密な関係では自己確証動機と自己高揚動機の両立が可能であることを示している。平成18年度は、実際に親密な関係においては自己高揚動機および自己確証動機をともに満たすことができていることを確認し、親密な他者から自己高揚的な評価を望むことと実際に親密な他者から好ましい評価を得ることの間を、親密な他者に対して自己高揚的自己呈示を行うことが媒介するという仮説の検証を行うために、質問紙調査を行った。質問紙調査では、被調査者に友人とペアになるよう求め、ペア同士を互いの回答がわからない距離に移動させ、個別に質問紙への回答を求めた。質問紙の内容は、(1)自己認知、(2)ペアになった友人に対してどの程度好ましい自己呈示を行っているのか、(3)ペアになった友人から実際にどのような評価を得ていると推測できるか、(4)ペアになった友人からの評価はどの程度正確であると思えるか、(5)ペアになった友人に対する評価、(6)関係の親密さ、(7)自尊心、(8)孤独感、である。自己呈示を測定する尺度としては、谷口・大坊(2006)の自己呈示尺度の中から「有能さ」と「個人的親しみやすさ」の2因子に含まれる項目を使用した。調査結果については、現在分析中であるが、平成19年度開催の学会において発表する予定である。また、この調査結果をふまえ、平成19年度は、大学新入生を対象に縦断的ペア調査を行う。
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