研究概要 |
本研究の目的は、Implicit Association Test(以後IAT ; Greenwald, McGhee, &Schwartz, 1998)を用い、禁煙外来患者の喫煙行動と健康に対する態度(潜在・顕在的)の関連性を検討するものである。また健康についての臨床場面への応用へも拡張しうる知見の創出を目指す。 平成20年度は、平成19年度にシルバー人材センターの協力のもと行った研究1、および研究2への予備調査のうち、自尊心に関してのデータ分析より、学会発表を2本行った。顕在的な自尊心が低くとも潜在的な自尊心が高ければ社会的適応にはさほど影響を及ぼさないことを明らかにした。 平成20年度は、19年度に行った予備調査に基づいて計画した本実験を行った(現在も継続中)。大阪府内の病院の禁煙外来にて、実験参加を承諾した患者につき、禁煙開始前(1回目)、開始1ヶ月後(2回目)、開始3ヶ月後(3回目)、開始6ヶ月後(4回目)の4回にわたり、煙草に対する態度測定(潜在的、顕在的)を行った。2009年2月末時点で分析に使用した人数は、1〜4回の順に、45, 26, 25, 11人であり、10ヶ月でのべ107名に実験を行った。2月末時点での分析の結果、喫煙本数は禁煙開始前には1日あたり平均29.78本(1回目)、7.78本(2回目)、0本(3回目)に減少しており、治療は効果的であることが分かる。また、1〜3回目の喫煙本数(自己報告)の多さは、1回目の喫煙イメージ(顕在指標)の良さと相関があるが、1〜3回目の尿ニコチン濃度(行動指標の1つ)の高さは、1〜3回目の煙草に対するイメージの良さ(潜在指標)と有意な相関があることが明らかとなり、ネガティブな行動の予測に潜在指標を用いることの有効性が示唆される結果となった。また特に配偶者からのサポートの多さが、3回目時点での尿ニコチン濃度や呼気一酸化炭素量の低さと関連があり、サポートが効果的であることも明らかになった。
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