研究概要 |
国内外の研究で、犯罪不安(Fear of crime)は被害リスク認知(Perceived risk of victimization)と強く関連することが明らかになってきたが、犯罪場面でのリスク認知研究は、これまで蓄積がある防災や原子力分野に比べて大きく立ち遅れている。そこで本研究では、I.犯罪に特化した被害リスク認知の定性分析、II.リスク認知の形成要因の分析、III.犯罪不安を煽らないリスク・コミュニケーション手法の開発の3つを目的とする。 平成19年度は、研究目的I・IIのため実施したウェブによる一般市民調査(n=550,性・年齢層別クオータ)と警察官調査(n=263,集合調査)を分析した。また、研究目的II・IIIのため、地区単位で比較可能な一般市民調査を実施した。住民基本台帳から層化2段無作為抽出法で2000名を抽出し、1186名から回答を得た(回収率59.3%)。ウェブ調査と警察官調査の主な結果は以下の通りである。 [被害リスク認知の定性分析]9罪種×9項目の評定結果に対して探索的因子分析(主因子法・バリマックス回転)をかけると、重大性-非重大性・流行的-古典的の2因子を得た。罪種別の因子得点平均を2次元上に布置すると、第1象限(重大で流行的)にストーカーや虐待児童殺人、第2象限(非重大で流行的)に振り込め詐欺、第3象限(非重大で流行的)に空き巣やひったくり、第4象限(重大で古典的)に傷害や身代金目的誘拐など、了解可能なリスク認知地図が得られた。 [専門家・一般市民間の比較]恐ろしさ・新しさ各因子の因子得点を、群(一般市民、警察官)、罪種の違いで説明する2要因分散分析を行ったところ、群・罪種の主効果・交互作用とも有意だった。一般市民は警察官よりも傷害や空き巣をより恐ろしく、振り込め詐欺を平凡なものと感じ、ひったくりをより古く感じていた。この原因として(1)脆弱性認知、(2)犯罪の統制可能性の認知、(3)楽観バイアスが考えられ、次年度以降に分析を進める。
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