国内外の研究で、犯罪不安(Fear of crime)は被害リスク認知(Perceived risk of victimization)と強く関連することが明らかになってきたが、犯罪場面でのリスク認知研究はこれまで蓄積がある防災や原子力分野に比べて大きく立ち遅れている。そこで本研究では、I.犯罪に特化した被害リスク認知の定性分析、II.リスク認知の形成要因の分析、III.犯罪不安を煽らないリスク・コミュニケーション手法の開発の3つを目的とする。 平成20年度は、(1)専門家(n=174)を対象にした犯罪リスク認知尺度の実証、(2)防犯広報やパトロールを実施中の首都圏1市での一般市民(n=2000)を対象とした社会調査データの分析、(3)防犯情報の提示実験を行った。 (1)では、8罪種×15項目の評定課題の結果を因子分析にかけたところ、恐ろしさ、統制可能性、被害の偏在、新興性、可視性の5因子を得た。罪種を統制したところ、恐ろしさ、偏在、可視性が各罪種内の頻度推定に影響していた。 (2)では、防犯活動を認知した回答者はそうでない回答者よりも、主観的確率が高まる一方、安全性評価や犯罪不安は悪化しておらず、その有効性が示唆された。 これらの結果を踏まえて、(3)脅威の程度(3水準)と対処行動の有効性(2水準)をそれぞれ操作した防犯情報を用いた情報提示実験を実施し、防犯情報における脅威アピールと対処行動の有効性を検証した。
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