本研究は、複数の文章が同時に呈示された構成の文章群を、「包括的なテキスト(Comprehensive text)」と呼び、その読解学習過程について心理学的に検討し、読解力育成に向けたプログラム開発を行うことを目的としている。 18年度は、包括的なテキストの読解学習についての研究を中心に行った。歴史教科書に見られた構造的な特徴は、他の領域のテキストでも確認された。すなわち、新聞、雑誌・書籍、事典、そして学校教科書に見られるように、包括的なテキストは多く存在していた。上記の包括的なテキストの読解において、読み手も複数の情報を用いていることが示されたが、その際、読解した情報の取捨選択や、表現形式については個人差が大きいことが明らかとなった(日本心理学会大会にて発表)。 また、海外の読解力の育成、測定においても、複数の情報を読み解き活用できる能力が、適応的な生活を送るうえで不可欠だとされており、このように読解において、情報の活用の側面が重視されているおり、これは包括的なテキストの読解に必要なスキルとも重なっていた。この現状を踏まえて、包括的なテキストの読解は論理的な思考力の基盤となりうること、「読解力」の定義を広げ、文章や資料、データを解釈し論理的に思考できる力を養成する必要があることを改めて指摘した。そして、複数の情報群を読解では、各情報の読解を個別に行うだけではなく、それぞれの情報の理解の確認と意味づけの機能を持つパラフレーズ(paraphrase)の作業が重要であることを論じた(東北大学大学院教育学研究科研究年報にて発表)。
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