研究概要 |
本研究は、複数の文章が同時に呈示された構成の文章群を、「包括的なテキスト(Comprehensive text)」と呼び、その読解学習過程について心理学的に検討し、読解力育成に向けたプログラム開発を行うことを目的としている。 19年度は,読解力育成プログラムおよび読解力テスト作成に向けて,理論的な整理と,部分的な読解力育成プログラム二種類の実施およびその効果の検証を行った。 読解力に関する理論的な整理では,従来から広く利用されてきた読解のモデルであるテキストベースと状況モデルを再考し,新たに読解の測度として読み手の知識との結合状態を基にした三区分(断片的,水平的,垂直的)を新たに提案した(読書科学にて発表)。 部分的な読解力育成プログラムとして,上記の読解の新三区分のうち,垂直的な読解を支援する方略として,図表を用いた概要作成の効果を大学生62名に対する実験で検討した。結果は,図表による概要作成を行った場合のほうが,文章による概要作成よりもより多くの情報が付加されており,学習者が自分の知識と呈示された情報との結合を深めたことが明らかとなった(読書科学にて発表)。また,記述内容の評価や書き手の意図・目的,複数の情報の関係性を明示するような「メタディスコース」が,テキストの評価に及ぼす影響について,大学生60名を対象として調査を行った。その結果,メタディスコースとして呈示した,記述内容の評価,書き手の意図・目的,複数の情報の関係性を理解の手がかりとして評価していたことが明らかとなった(日本心理学会および東北大学大学院教育学研究科年報にて発表)。 以上の成果を踏まえ,20年度はより総合的な読解力育成プログラムを提案し,その効果を検討する。
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