研究概要 |
本研究は、幼児期の発達における母親と保育者の役割を比較するために、子どもと母親・保育者の関係性を測定し、年齢に応じた子どもの発達特徴との関連を検討したものである。 3年目の最終年度である平成20年度では、これまで幼稚園入園時から縦断的に追跡調査を行ってきた年長児49名を49名を対象とした。子どもと母親・保育者との関係性の測定について、まずPAT(Picture of Attachment Test)を用いた面接調査を行い、母親・保育者それぞれに対する子どもの愛着得点を算出した.また、CCP、CCT(Children's Cognition of Parents/Teachers)を用いた面接調査を行い、子どもが認知する母親・保育者からの受容得点-拒否得点を算出した。さらに、子どもの発達特徴について、絵カードを用いた面接調査から子どもの自己制御能力(自己主張能力・自己抑制能力)を測定し、担任保育者の評定から子どもの向社会性の高さについても測定を行った。 その結果、母親への愛着得点が高い子どもの方が低い子どもよりも、自己主張能力が低い傾向があり(r=-.27.p<.10)、自己抑制能力が高い傾向がある(r=.29,p<.10)ことがそれぞれ示された.また、保育者を拒否的と認知している群の子どもの方がそうでない群の子どもよりも、向社会性が高い傾向があることが示された(t=-2.01,p<.10)。 以上の結果から、幼稚園年長児においては、母親との関係性は子どもの自己制御能力の発達に関連し、保育者との関係性は子どもの向社会性の発達に関連する可能性が示唆される。
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