本研究では、幼児期の対人関係の広がりに焦点を当て、特に保育者との対人関係が子どもの発達にどれくらい重要な影響を与えるのかについて、母親との比較を行うことにより明らかにすることを目的とする。その際、幼児期の発達に母親・保育者との関係性がどのような影響を与えるかを各年齢ごとに調べるために、幼稚園入園時から卒園時まで子どもの追跡調査を行い、母親・保育者との関係性と子どもの年齢に応じた社会的発達との間の関連について検討を行った。その結果、年少児時点では保育者との関係性が子どもの有能感の発達と有意に関連し、年中児時点では保育者との関係性が子どもの向社会的行動の中の共同作業、感情推論能力の中の他者の嫌悪の推論との間にそれぞれ有意な関連が示されたのに対して、母親との関係性と子どもの発達との間に有意な関連は見られなかった。また、年長児時点では、母親・保育者の関係性と子どもの発達特徴との間に有意な関連は見られなかった。これらのことから、子どもにとって新しい環境である幼稚園に入園した時点では、園の保育者との関係性が子どもの社会的発達に母親よりも重要な影響を与える可能性があることが示唆された。
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