本研究の目的は、(1)従来の青年期的概念と現代における青年の姿との合致点・相違点を明確にし、青年期の再定義を行うこと、(2)現代における青年期の自己意識の功罪について検討すること、(3)日本における現代青年期のあり方を欧州のそれと比較検討すること、である。2006年度は特に、次年度以降の礎となる理論的基盤の構築を目的としていた。 2006年度の成果は、以下の3点であった。 1.青年期における自己意識を検討する視点の整理:現代青年期を理解するための枠組みを、文献、国内外の学会・研究会での議論を通して検討した。それに先立ち、自己論における理論的基盤の検討、および、本研究課題検討が実際的問題にどの程度貢献できるかの議論を通しての意義の確認を行った。その後、上記方法による検討を通して、経済状況、政治状況、文化状況といった社会構造の側面を前提とし、教育、内省、表現の各パターンの変容をとらえることが必要であるとした。これについては、一部、書籍で発表し、全体については、出版社に企画を提出し受理された。現在、執筆を進めている。 2.1.に基づいた過去のデータの再分析、論文化:(1)人生において重視される自己の諸側面と心理的健康との関連、(2)"真の自己"観念の所有とキャリア意識との関連についてまとめた。(1)では、自分らしさを求める心性が大きく関係性に依存している可能性がある点に、自分探しの難しさがあるのではないかと結論づけた。(2)では、"真の自己"観念は、その所有よりも追求の程度がキャリア意識と関連すると示唆された。 3.1.に基づいた新たな調査の実施:新たに、「自己探求的態度」と「キャリア意識」との関係を検討するための調査を行った。被験者はいずれも大学生男女であった。現在、分析を進めているところである。
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