研究概要 |
人文社会科学での因果効果の推定において重要である「従属変数と群への割り当て変数どちらにも影響を関連のある共変量」の影響を除去する解析法の研究を昨年に続き行った。 具体的にはRosenbaumとRubinが開発した傾向スコア解析法を、昨年度の研究で潜在変数上での因果効果推定法へと改良し、発表したが(Hoshino, Kurata and Shigemasu, 2006)、「群への割り当てモデル」が正しくない場合には推定にバイアスが生じることから、さらに、「目的変数と共変量の回帰モデル」と「群への割り当てモデル」両方に対するモデル指定を事前に行っておき、そのどちらかが正しければバイアスなく因果効果を推定することができる「二重に頑健な推定法」を開発し、その成果が計量心理学でもっとも権威あるPsychometrika誌に掲載された。 因子得点の厳密な信頼区間などを計算するためには、MCMC(マルコフ・チェーン・モンテ・カルロ)法を用いたベイズ的な推論が必要であるため、ベイズ的な手法を用いた傾向スコア解析法を提案し、論文をComputational Statistics and Data Analysis誌に投稿し掲載された。 さらに、このような群間比較で生じる多重比較について、より検出力が高い、新しいベイズ手法を提案し、論文をComputational Statistics and Data Analysis誌に投稿し、採択が決定した。 また、これらの新しい方法を応用分野の研究者が利用できるよう、解析プログラムの整備を行った。
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