平成20年度は前年度からの継続である、小学校高学年の2クラスを対象とした縦断的研究を行った。 前年度の小学校5年次秋、冬に加えて、6年次の冬にデータ収集を行い、なりたい人物像、共感性、社会的スキル、仲間圧力などの変数について、継続的にデータを収集し、分析を行った。学年2クラスの各担任と打ち合わせを行い、児童のリーダーシップを育てる意図的な取り組みを行った。具体的には特別活動の時間などにリーダーシップについて考えさせる授業や、小学校の最上級生としての自覚を深める授業を行い、1年生の世話や委員会活動等で実際にリーダーシップを発揮する機会を作った。質問紙から得られたデータの分析から、こうした働きかけにより、クラス全体が良い方向に変化したことが推測される。 また、前年度までに実施した学校における問題行動と関連の深い危険因子、保護因子を探索する質問紙のデータを詳細に分析し、その結果を国際心理学会(XXIX International Congress of Psychology)にて発表した。学校教職員を対象とした調査により、学校における問題行動(暴力やけんか、いじめ、学級崩壊など)に関連する危険因子と、保護因子を「本人」「家庭」「学校」「地域・社会」という4つのレベルに分類し、検討を行った。影響力の強い危険因子、保護因子を特定すると共に、問題行動の頻発している学校では危険因子の数が多いこと、保護因子の数が少ないことも明らかにされた。 このような研究結果から、学校レベルで危険因子を減らし、保護因子を増やすことができれば、学校における問題行動を予防できる可能性があることが示された。
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