本研究は、幼児期の三者関係の成立と維持にかかわるコミュニケーションスキルの発達について検討することを目的とする。初年度にあたる今年度は、仲間関係の初期の三者間のコミュニケーションについて検討するため、幼稚園年少児を研究対象とした。仲間同士の3人組の遊び場面でどのようなコミュニケーションを行っているかを明らかにするため、年少児15名(平均年齢4歳7カ月)が同性3人1組で10分間粘土遊びをするという実験場面を設定し、観察を行った。また、実験に参加した子ども同士の日常場面での仲間関係(一緒に遊ぶ頻度)について担任教師にインタビューを行った。本研究では実験場面で生じた子ども達の発話、視線行動、笑い、模倣の頻度及び対象について分析を行った。その結果、各グループで3人組のコミュニケーションの特徴が非常に異なっていることが明らかになった。そこで、日常生活での仲間関係のタイプ別に実験場面での三者間のコミュニケーションについて検討した。その結果、日常生活でよく一緒に遊んでいる3人組の子ども達は、発話時に相互に視線を向け合うことが多く、笑いもよく生じ、他者の発話や動作を模倣することも多く、3人それぞれがお互いに関わりあっていた。一方で、日常生活では3人一緒に遊ぶことがあまり多くない3人組では、個人の発話量に差がみられ、他児に視線を向けたり、他児の模倣をしたりすることが比較的少なく、3人の間で均等なやりとりは行われていなかった。本研究の結果、子ども同士の三者間コミュニケーションをうまく成立させ維持するためには、他児の発話や動作の模倣や、笑いを引き出す発話や動作、宛先を1人に限定しない行為が重要なことが示唆された。今後、さらに対象児の人数を増やし、対象年齢をひろげて三者間コミュニケーションについて検討していきたい。
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