1.心の理論と実行機能の関連について調べるため、4〜6歳児61人を対象に誤信念課題(自己信念質問・他者信念質問)および実行機能課題(DCCS、ストループ様課題(赤/青課題))を統制条件(ノイズ条件)および実験条件(無関連言語音条件または無関連視覚刺激条件)のもとで実施した。その結果、ストループ様課題、誤信念課題(自己信念質問・他者信念質問)で無関連言語音の妨害効果が見られたが、無関連視覚刺激の妨害効果は誤信念課題(他者)でしか見られなかった。心の理論課題(誤信念課題)と実行機能課題の関連および実行機能課題の下位過程として作動記憶の関与が注目されているが、誤信念課題(自己信念質問・他者信念質問)とストループ様課題は作動記憶の音韻ループの機能に依存し、誤信念課題(他者信念質問)のみが作動記憶の中央実行系に依存している可能性が示された。ただし、これらの結果は先行研究における成人を対象とした同様の実験手続きに対するデータと一致するものではないため、今後さらなる検討が必要である。 2.保育園での日常的な活動で困難--給食の準備や掃除で活動開始時に集まれない、活動の手順ややっていることの目的がわからないなど--を示す年長児1名を対象に観察および環境調整を中心とした介入を行った。観察および知能検査の結果、対象児はプランニング、ある活動から他の活動への柔軟な切り替えなどに困難があり、実行機能の問題がうかがわれた。給食の準備と掃除という活動場面において、活動の始まりと終わりの明示、活動手順の固定と視覚的な提示、活動内容ごとに道具を変えるといった取り組みを段階的に導入した。その結果、これらの場面では約2ヶ月後には相当程度の改善が見られた。なお、こうした環境調整は対象児の活動を直接支援するだけでなく、対象児以外の子どもの対象児に対する援助や声かけの促進をもたらした。
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