研究概要 |
1.前年度,幼児を対象に誤信念課題および実行機能課題を実験条件(無関連言語音条件または無関連視覚刺激条件)のもとで実施した。誤信念課題および実行機能課題に対する視覚的妨害(無関連視覚刺激)としてより効果の大きなものを開発するため,成人を対象に実験を行った。具体的には実行機能課題(WCST、ストループ様課題)を主課題とし,背景で多数のドット(150個)がランダムな方向に移動する課題を作成した。なお,ドットの移動方向としては完全にランダム(一致率0%),5%のドットが同一方向に移動(一致率5%),30%のドットが同一方向に移動(一致率30%)の3種類であった。これらの視覚的妨害(無関連視覚刺激)は主課題を有効に妨害しながったため,さらに課題途中で移動の方向が変化する視覚的妨害(無関連視覚刺激)を作成し,現在データの収集中である。 2.心の理論と実行機能の関連について調べるため,5〜6歳児を対象に誤信念課題および実行機能課題(DCCS,ストループ様課題(赤/青課題))を統制条件(ノイズ条件)、および実験条件(無関連言語音条件または無関連視覚刺激条件)のもとで現在実施中である。 3.保育園での日常的な活動で困難-他児とのトラブルが多い、活動の手順ややっていることの目的がわからないなど-を示す年長児1名を対象に観察および環境調整を中心とした介入を行った。観察および知能検査の結果、対象児は言語的な能力は高いが,視空間的な理解に問題があるとともに,ある活動から他の活動への柔軟な切り替え,行動の抑制などに困難があり、実行機能の問題がうかがわれた。保育士および母親に対するペアレント・トレーニングを行い,特に指示の出し方、活動の始まりと終わりの明示、活動手順の固定と視覚的な提示といった取り組みを導入した。その結果、介入開始から6ケ月が経過した現在のところ,担当保育士および母親の対象児に対する理解が促進されるとともに,家庭や保育園における日課的な活動に関しては特に他の活動への切り替えは容易になったが,他児とのトラブルに関しては十分な改善は見られていない.
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