研究概要 |
近年、子どもを狙った誘拐事件が後を絶たず、子どもの安全に対する社会的な危機意識が高まっている。本研究はこのような事件を未然に防ぐための一つの手段として、発達心理学的アプローチ(実験法・調査法)により、子どもの危険認知の発達過程について検討するものである。 年中~小学2年生の保護者を対象とした調査(江尻,2008)によれば、子どもの年齢が低いほど、保護者が予測する「子どもが見知らぬ人物についていく可能性」の程度は高かった。では、個々の親子で見たときに、保護者の認識と、実際の子どもの危険回避能力とはどの程度関連しているのだろうか。これを明らかにするため、本研究では、上記のアンケート調査を分析材料に、保護者が予測する自分の子どもの危険認知能力と、実際の子どもの危険認知能力と関連について検討した。 その結果、保護者の予測する、子どもが未知の人物についていく可能性は、子どもが「危険回避群(17名)」の得点(平均)は3.12、非危険回避群(29名)の得点(平均)が2.90であり、有意な差はなかった。また、危険回避群の保護者のうち、子どもが危険を回避できると考えているのは(親の予測と子の行動が一致)7名であり、危険を回避できないと考えているのは9名であった(親の予測と子の行動が不一致)。一方、差危険回避群の保護者のうち、子どもが危険を回避できないと予測するのは(親の予測と子の行動が一致)11名、危険回避できると予測するのが12名(親子不一致)であった。以上の結果から、保護者の子どもの危険認知能力に対する認識が、実際の子どもの危険認知能力と関連しているとは言えなかった。これらの結果について、今後さらに検討を重ねたい。
|