研究概要 |
本研究の目的は,大学の教職科目において,教員志望の学生たちが,問題場面(教師あるいは子どもがフラストレーションを抱える相互作用場面)における実践的知識を習得していくためのプログラムを開発することである。とりわけ,大学生たちが,学校における児童生徒とのさまざまな相互作用の状況に対応できるための,コミュニケーションのレパートリーを豊富にすることを支援するプログラムの開発に力点を置いている。 こうした目的を果たすために,平成18年度においては,プログラムの開発に先立ち,中学校の問題場面に関する実証的な研究を通じて,基礎的な資料を集めることを実施した。具体的には,中学校の生徒を対象とした質問紙調査を行った。質問紙には,中学校においてしばしば見られる5つの問題場面(例:授業中に,ある生徒がおしゃべりをしている場面)の描写について印刷したものを用いた。そして各場面の描写に対して,教師が用いるさまざまな言葉かけ(1場面につき25〜26種類)を質問項目として提示し,生徒がそれらの言葉かけについて,どれだけ望んでいるかをたずねる形式とした。また,各場面に実際に直面したときに,生徒たち自身が抱く内的な信念について評定する質問項目なども設けた。 調査の結果,問題場面において生徒が求める言葉かけには一定の傾向があり,励まし(「〜がんばって」など)や忠告・意見(「〜すると,良いことがあるよ」「〜は大切なことだよ」など)といったカテゴリーに分類できる言葉かけが求められやすいことを明らかにした。また,問題場面において児童生徒が抱く信念のあり方と,彼らが求める言葉かけとの間には,有意な相関のあることを示した。
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