研究概要 |
本研究の目的は、幼児期の描線の質的な変化をとらえる視点としての、「ストロークの単位」の妥当性を検討することであった。先行研究(小森,2005)では、以下の2点が明らかにされた。幼児期には描線の形の成否ではなく、描線を産出する際の自己の手指の制御、つまり「ストロークの単位」があって制御された描線を産出しているかどうかという違いが存在していること、その違いが、形をかく際に自分の運動を変更できるかどうかと関連していることであった。この結果から、幼児に無理のない課題を用いて、幼児期に描線の形からではない違いが存在していることを示すことができた。一方、測定方法の標準化、量的な測定値からのデータ収集が課題としてあげられた。 今年度は、ペン型の筆圧計を用いて、「ストロークの単位」の有無と筆圧の関連を検討した。5,6歳児を対象に先行研究と同じ描線描画課題を行い、筆圧が測定できるペンを用いて描かせ筆圧を測定した。同時に、図形模写課題を実施し、実験者の例示によってかき方を変更できるかどうか検討した。結果は、図形模写課題における例示によるかき方の変化と、描線描画課題における筆圧とは関連がみられなかった。この理由としては、測定値の算出方法、幼児におけるペンの使いやすさなどの理由が考えられた。 上記の実験結果を論文にまとめ、『立命館文学』にて発表した。また実験結果の一部は日本発達心理学会第18回大会で発表された。
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