研究概要 |
本研究の目的は,自然生命体と人間との交流がもたらす発達的意味を解明し,現代日本における自然観・生命観の一端を明らかにすることにある。特に、本研究では「虫」という身近でありつつ、見逃されがちな生き物と人間との関係に焦点を当てて研究を行うものとする。この目的のために、2006年度に実施したことは、観察データの収集とそのデータベース構築および質問紙調査である。 (1)幼稚園での実態観察:自由保育の時間に虫捕りあそびにでかける子どもたちの姿や,教室や廊下,園庭など,いたるところで出会う虫に対する子どもたちの反応や活動(言葉かけや虫あそび)をビデオカメラで記録した。観察頻度は週に1回程度である。(2)就学前児を対象としたインタビュー調査の分析:捕獲した経験のある虫の名前や、幼稚園に生息している虫の名前について尋ね、幼児期の原体験としての虫との関わりを探った。その結果、虫に対する好き嫌いの好みには幼児期においてすでに男女差が見られることや、男女によって関心のある虫の種類には違いがあることなどが示された(総合科学研究所年報:大阪経済法科大学・印刷中)。(3)大学生を対象とした質問紙調査:現代日本における青年の昆虫観の一端を探ることを目的に、約150名の大学生を対象として、虫の名前の認識度を調べる課題を行った(分析途中)。(4)データベースの構築:虫をめぐる幼児の活動の実態観察は2000年から6年間にわたって継続してきた。これらの縦断的観察データの効率的な分析のために、その全てをハードディスクに取り込み、分析の基盤となるデータベースの構築を行った。 次年度からは、幼稚園での実態観察に基づいた子どもたちの虫をめぐる諸活動の分析を開始するとともに、幼児および大学生への質問調査の実施および分析を行いたい。
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