本研究の目的は、(1)行政処分を受けた運転者の教育に使われている運転適性検査の有効性を検証する、(2)事故・違反歴またはその他の問題行動を踏まえて行政処分を受けた運転者を分類し、より効果的な教育を提案する、(3)事故・違反等の客観的指標により講習の効果を評価する、の3点から構成される。 昨年度までに、(1)において運転適性検査に関する検討を行い、(2)において免許停止あるいは取消処分を受けた運転者の属性や事故違反歴を基に、行政処分運転者の分類を行った。(1)と(2)の結果、飲酒運転違反は、他の交通違反・交通事故とは親和性が低く、飲酒運転をした者に特化した教育の必要性、および現行の運転適性検査の課題が明らかになった。飲酒群と対照群に実施した質問紙調査からは、飲酒群には飲酒行動と運転行動の双方に特徴があることと、アルコール依存症を含む問題飲酒傾向の出現度合いについての基礎的資料を得た。また、飲酒運転により取締りを受けた者の医学的、心理学的評価の方法についてドイツの先進例を基に、提案を行った。今年度は、飲酒群と対照群の事故・違反歴の分析を実施するとともに、ドイツで実施されている飲酒運転者への認知行動療法に基づくリハビリテーションについて調査を実施した。その結果、事故・違反歴だけでなく、飲酒運転への態度変容をアウトカム指標として、違反者の抱える個別の問題に対応した小集団カウンセリングを実施することが効果的であると考えられた。これらの研究結果は、現在論文としてとりまとめているところである。
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