本研究では、療育的視点から超重症児(者)を対象として、働きかけに対する定位反応の発生・発達的変化を評価する。それをもとに、外界の刺激に対する超重症児(者)の認知発達における援助のあり方を検討することを目的とする。 2年間の結果を受け、本年度は、蓄積されたデータの分析および継続的収集に加え心拍反応と他の検査方法による評価を組み合わせ、心拍反応の有効性についても改めて検討を試みた。具体的には、データの収集に加え経年変化および近赤外線スぺクトロスコピー(NIRS)による脳血流量評価を取り入れ分析を行った。収集データの分析については経年変化による分析および定位反応を反映するとされる心拍の一過性減速反応に着目した。 結果、経年変化については、徐々に「反応なし」の割合が減少し、かわってはじめに驚愕反応を反映する一過性加速反応の割合が増加し、その後定位反応を反映する一過性減速反応の割合が増加してくる傾向が見られた。一方、NIRSによる評価を加味した試行からは、他の場合と比較して心拍の一過性減速反応が確認された場合に脳血流量の増加が顕著であると推測できる結果を得た。また、年少児および成人期の対象者において、同様の傾向が見られることも推測された。 以上のことから、継続的実践の有効性が示唆されると同時に、心拍変動上定位反応が見られる場合には、能動的に動こうとする意識が働いていることが推測でき、外見上の動きが確認できない事例については、このような評価の実施が有効であると推察された。また、これらの結果は、「反応がない」と捉えられがちな重篤な障害を持つ児童の発達を促す上で基礎となる、内面的変化を捉えたと考えることができ、長期にわたる継続した働きかけや療育実践が超重症児(者)の反応を引き出す上で重要であると考えることができる。
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