研究概要 |
近年、大学生の不登校問題が顕在化し、平成12年当時文部省による答申「大学における学生生活の充実方策について」の中で不登校の大学生を援助することの重要性が指摘された。しかし、予防的側面を重視するならば、いわゆる不登校予備軍、すなわち不登校傾向にある大学生に着目しその理解を深めることも重要であり、それは大学生の不登校問題を解明する手がかりを得ることにつながると考えられる。 本研究(2年間)は大学生の不登校傾向を理解するための基礎研究の一環として、不登校心性を客観的に測定する尺度の開発を行う。また、臨床経験によると大学生の不登校傾向の形成には諸要因の中でも対人恐怖心性が強く影響を与えるという仮説を有する。そこで大学生の不登校傾向と対人恐怖心性との関連性について検討を行う。初年度は前者の研究に着手し、以下のような結果が得られた。 1.予備調査-尺度項目の収集 大学生の不登校に関する従来の文献および自験例から不登校心性を表す記述を網羅的に収集し、さらには大学生5,587人(平均20.2歳、SD1.88)を対象とした質問紙調査から不登校心性を収集し項目化した。専門家による内容的妥当性の検討を経た上で138項目の予備尺度を構成した。 2.本調査-尺度項目の決定 大学生544人(平均19.7歳、SD1.32)を対象に予備尺度を実施した。項目分析を行った後に因子分析を行った結果、5因子が抽出された。第1因子は不安、第2因子は大学生活への不満感、第3因子は学業脱落、第4因子は心身疲労、第5因子は言語化困難を意味した。この結果に基づき下位尺度化を図り、5尺度42項目から成る尺度が作成された。尺度は十分な内的整合性を有し、関連尺度との相関も予測通り有意であり、尺度の信頼性と妥当性の確認がなされた。 以上の結果より、大学生における不登校心性尺度が開発された。
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