研究概要 |
実際に不登校状態にある大学生の心理的側面を理解しその状況に応じた対応を図ることは重要である。その一方で、予防的観点からは、不登校になる以前、すなわち不登校の心理的傾向を有した大学生に着目し、その理解を深めることも意義があると考えられる。本研究は大学生の不登校傾向を客観的に測定する心理尺度を利用し、大学生の不登校傾向は対人恐怖心性に規定されるという仮説に基づき、両者の関係を数量的に検討することを目的とした。 1.予備調査:大学生の不登校傾向を測定する尺度として不登校心性尺度(第1因子「不安」、第2因子「大学生活への不満感」、第3因子「学業脱落」、第4因子「心身疲労」、第5因子「言語化困難」、及び不登校傾向尺度(第1因子「登校回避行動」、第2因子「登校回避感情」)を構成した。 2.本調査:大学生5,165人(平均20.17歳、SD1.81)を対象に上記の不登校傾向を測定する尺度及び対人恐怖心性を測定する尺度等を実施した。統計分析の結果、不登校傾向は総じて対人恐怖心性によって説明されうる結果が得られた。特に「登校回避感情」は対人恐怖心性の「孤立・親密恐怖」によってかなり規定され、「登校回避行動」は対人恐怖心性の「被害恐怖」によって規定される傾向にあることが示唆された。不登校心性の「不安」「大学生活への不満感」と対人恐怖心性の「孤立・親密恐怖」、不登校心性の「学業脱落」と対人恐怖心性の「劣等恐怖」、不登校心性の「心身疲労」と対人恐怖心性の「被害恐怖」はそれぞれ有意な関連を示した。他の諸要因との関連性を踏まえた調査結果においても、大学生の不登校傾向は対人恐怖心性に規定されうることを示唆する結果が得られた。大学生の不登校を予防する一手段として対人恐怖心性に焦点をあて、その低減を目指すことの重要性が示された。
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