研究概要 |
本研究の目的は,Hammen(1991,2006)により提唱された「ストレス生成モデル」(「抑うつのリスクのある者は,客観的なストレッサーを自ら引き起こし,抑うつを発症ないし悪化させる」とする仮説)を本邦において検討することと,この「従来型ストレス生成モデル」を拡張した「拡張型ストレス生成モデル」(「抑うつのリスクのある者は,客観的なストレッサーが存在しないにも関わらず,主観的なストレッサー知覚を高めて,自らの主観的環境を自らストレスフルにすることで抑うつを発症ないし悪化させる」とする仮説)を検討することである。平成18年度の研究成果は次の通りである。 まず,従来型ストレス生成モデルを検討した。その結果,友人との関係を避けようとする回避行動は友人関係でネガティブな出来事の頻度を高めて抑うつを強めること,友人関係で親切にするなどの向社会的行動は友人関係でポジティブな出来事の頻度を高め抑うつを低めることなどが示された。この成果は,日本心理学会第68回大会において発表された。 次に,拡張型ストレス生成モデルを検討した。主要な成果は,次の3つである。第1に,抑うつ的な対人スキーマが中立的な対人状況に対するストレッサー知覚を高めることと,ストレッサー知覚が抑うつと関係することが示された。この成果は,Association for Psychological Science 19th Annual Conventionで発表される(採択済み)。第2に,対人状況に対するストレッサー知覚は,対人領域の抑うつスキーマと関係するが,達成領域の抑うつスキーマとは関係しないこと(ストレス生成の領域特異性)が示された(日本教育心理学会第49回大会で発表予定)。第3に,両極的な愛着スタイルと不安定的な愛着スタイルはストレッサー知覚を高めることが見いだされた(日本心理学会第69回大会で発表予定)。
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